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第73回民事介入暴力対策埼玉大会
協議会資料編集後記

執筆 : 代表弁護士 大塚嘉一

本書は、暴力で人を従わせようとする勢力に、勇気と智恵をもって敢然と立ち向かい、正義を追い求めた者たちの記録である。

「まだ民暴、やってんの?」。昭和63年に弁護士登録と同時に民暴委員会に所属して二十数年、なお一委員として活動を続ける私に対して、冗談半分に投げかけられた言葉である。

普段は、法廷で高度に洗練され芸術の極みにまで高められた揚げ足取りに夢中で取り組む弁護士も、裁判所を一歩出れば、暴力を背景にした不当要求に苦しめられる市民を前にして、自分の無力を痛感せざるを得ない。民暴弁護士は、暴力行使の正当性を法により付与された国家機関の助けを借り、法を解釈する権限を与えられた国家機関を説得し、暴力の絡んだ紛争を解決する。民暴事件は、剥き出しの暴力と言葉の論理との交錯する現場である。

オーストラリアのフクロオオカミは、捕食者がいなくなれば次の捕食者が現れることを教えてくれる。暴対法施行後、姿を変えた暴力が市民を苦しめている。我々は、新たな不当要求に対しては、新たな対抗策を考えださなければならない。

およそ紛争は、資源の制約及び我々に平等に与えられた有限の生という人間の条件に出来する。全ての闘争は、各人の我が内なる悪との戦いでもある。紛争の解決に至る道程は、天上の神の頬に手を触れようとする試みでもある。

民暴に「卒業」はない。

本書は、これからも続くであろう闘いにおける道標たらんことを目指した。現時点における知識と経験を共有するための理論と資料とである。民暴事件を扱う手練の弁護士、昨日民暴委員になった新人弁護士、いずれにとっても有益な情報がつまっていると確信している。

全国各地からアンケートの回答や資料を送ってくださった同士に、我々スタッフを代表して満腔の感謝の意を表する。残念ながら時間や編集の都合で掲載できなかったものもあるが、それらはスタッフにインスピレーションを与え、間違いなく本書に反映されている。不備な点や誤りもきっとあると思うが、関係者のご容赦を乞いたい。

最後に、しかし心に留めておきたいことがある。本書は、全委員の情熱と松本委員長のリーダーシップとの幸せな結婚によって生れた。委員全員の身を削るような著述、編集に向けられた努力と、委員長の厳父のような時にユーモアあふれる叱咤激励とが、感応しあい奏でる共鳴音が本書の全編に満ちているはずだ。本書を送り出す幸せをともに喜びたい。


平成22年11月
第73回民事介入暴力対策埼玉大会
協議会資料部会長兼事務局長
大 塚 嘉 一

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