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平成23(2011)年8月のコラム一覧へ戻る

政府のモニタリングと日弁連と私

執筆 : 代表弁護士 大塚嘉一

1.日本国政府が、原発情報のモニタリングをしていることが判明しました。

先に、経済産業省資源エネルギー庁は、平成23年度原子力安全規制情報公聴・広報事業(不正確情報対応)の入札公告をしておりましたが(平成23年6月24日)、その事業目的は、「ツイッター、ブログなどインターネット上に掲載される原子力等に関する不正確な情報または不適切な情報を常時モニタリングし、それに対して速やかに正確な情報を提供し、又は正確な情報へ導くことで、原子力発電所の事故等に対する風評被害を防止する」とあります。

それが、同年7月15日に入札され、某広告代理店が落札、契約したそうです。

果たして、本日(平成23年8月4日)現在、原発情報に関してこれまで活発に活動してきたネット上の某有力メディアの一部が、更新されないままとなっています。政府のモニタリングとの関係はないのでしょうか。

2.日本弁護士連合会は、平成23年7月29日、政府の原発情報のモニタリングに対して、国民の表現の自由を侵害するとして、直ちに中止するように、会長声明を発表しました。満腔の賛意を表明します。

弁護士は、全国各地の弁護士会に入会を認められて初めて弁護士として活動ができます。私の場合は、埼玉弁護士会です。それと同時に、日弁連の会員になります。いずれも加入が義務付けられています。

私は、今までに、日弁連や埼玉弁護士会の方針に異議を唱えずにはいられなかったことが何回かあります。

その際、日弁連や埼玉弁護士会が、私の言論を弾圧したり、チェックしたりということは決してありませんでした。

死刑制度については、死刑制度の存置を主張する私の論考が、日弁連の会誌である「自由と正義」に掲載され、弁護士会のみならず各界から反響がありました。憲法9条については、私見を公にしたことはありませんが、明らかに弁護士会とは歩調を異にする雑文を書き、それは埼玉弁護士会の冊子に掲載されました。いずれも当サイトの該当箇所でご覧になれます。

このように、弁護士会と衝突してきた私ですが、その私でさえ、今回の政府の行動については、日弁連と全く同様の危惧を覚えます。

3.このたびの政府のモニタリングは、あまりに稚拙であり、あまりにあからさまなので、直ちに批判を浴びることとなりましたが、実はもっと巧妙に、人知れずプロパガンダ活動が行なわれているのではないでしょうか。いや、確実に行なわれています。

現に、今回の入札の前から、某財団が、同様の活動をしていたことが、同時に明らかにされました。

国民は、政府のプロパガンダを見抜く知恵を持つことが必要です。国民が政府に騙されずに、逆にどこまで国民が政府を監視することができるのか。日本国の民主主義が、どの程度根付いているのかの試金石であると、私は思います。

言論の自由がなければ、民主主義は死滅します。我々は、この問題を放置することなく、自由獲得のために闘い続けなければなりません。

4.政府のしてはいけないことは原発情報のモニタリングで、しなければならないのは放射線のモニタリングです。我々国民のするべきは、政府に対する不断のモニタリングです。

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