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平成23(2011)年12月のコラム一覧へ戻る

チェックライターと財政危機

執筆 : 代表弁護士 大塚嘉一

事務所の備品を整理していたら、チェックライターが出てきました。

チェックライターというのは、小切手等の券面に数字等を印字する器械です。改竄防止のために、特殊な凹凸をつけて数字を印字するものです。チェックライターにとっては、数字こそが命です。

今では、小切手そのものが利用されることが少なくなったので、チェックライターを知っている人も多くはないでしょう。銀行にお勤めの人でも、若い人の中には、触ったこともないという人もいそうです。

当事務所の創始者の菊地博泰先生が破産管財人をしているときに、使っていました。今回、机の中から出てきたのは、当事務所で何代目かのものです。数十人、場合によっては百人を超える人や会社に、金銭を支払ったり、配当するときに使いました。

現在、小切手や手形などを使う機会はずっと減ってきています。電信による振込みが発達して、瞬時にお金が移動します。ますます、お金を扱っているという意識が薄れてきています。

貨幣は、ますます、その抽象度をあげています。貝殻や、金や、紙など、それ自体に意味があるのではなく、それに対する信用がその本質です。一見すると、皆が、貨幣だと思うから貨幣として通用するという、循環論法が当てはまりそうです。しかし、ただの形式論理だけで成り立っているのではありません。

お金は、それ自体に意味があるのではなく、その背後にある人間の労働こそが、その本質です。貨幣には、人間の労働が込められています。あるいは、それを将来得られるという信用が付与されています。そして、そうであればこそ、お金は、お金として流通するのです。

そして、お金は、人々の分業を可能にし、人間の生産性を増加させます。しかし、場合によっては、それを持つ人と持たざる人とを分断する原因ともなります。通貨には、常に、その二面性があります。

ヨーロッパが財政危機に苦しむ姿を見ながら、日本は来年の国家予算に過去最大の国債発行を伴いそうだとの報道に接しました。為政者は、この国をどのように運営していこうとしているのか、依然として明らかでありません。お金の本質に、今一度、着目してみる必要があります。お金を数字としてしか認識できないのでは、チェックライターに過ぎません。

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