メインメニュー


弁護士が執筆するコラム - 埼玉県さいたま市の弁護士事務所- 菊地総合法律事務所は、相続、不動産、同族会社の案件や、株式買取請求などの非公開会社の案件を多数解決しています。その他、交通事故や貸金などの一般民事事件、離婚、財産分与などの家事事件、少年・刑事事件、そして企業法務や自治体の法務にも経験をつんでおります。


ナビゲーション

平成26(2014)年5月のコラム一覧へ戻る

朝日新聞の誤りを正す―英語における仮定法の一事例

執筆 : 代表弁護士 大塚嘉一

1.ずっとインターナショナル・ヘラルド・トリビューンInternational Herald Tribune紙を定期購読していました。パリ生まれらしくファッション面が充実した素敵な新聞でした。何年か前に、New York Times社に身売りされ、日本では最初、朝日新聞社が扱っていたものが、最近、Japan Times社が扱っています。名称もインターナショナル・ニューヨーク・タイムズInternational New York Timesと変わりました。

私は、今も同紙の、Op-Edを中心に読んでいます。Op-Edというのは、社説の反対側にある署名記事のことです。Oppsosite Edetorialの略なのですね。通常の新聞記事というのは、事実が並べられるだけで、文章も雑なことが多く、あまり面白くありません。そこにいくと、Op-Edは、文章も手が込んでおり、読んでいて楽しい。話題の新刊書についての著者自身による記事もあり、これは書評の代わりにもなって重宝します。

弁護士業務にも役立っています。

2.NYTのOp-Edの常連投稿者に、有名な経済学者、ノーベル賞受賞者のポール・クルーグマンがいます。

朝日新聞では、クルーグマンのNYTのそのコラム記事の翻訳が載ることがあります。私の読みが正しいか確認するために、こちらも、よく読ませてもらっています。

最近のNYTの記事“Crazy climate economics”も、早速「気違いじみた気候経済学」として翻訳が掲載されました(平成26年5月16日付け朝刊)。

さて、その朝日新聞の翻訳文中に原文“Who knew?”の訳として、「誰が知っていただろう?」とあります。誤訳でしょう。

直前の文章は、“Taking cost into consideration is Marxist?”と現在形なので、問題の文章も、普通であれば現在形で続くはずです。それが、過去形になっているのは…。そうです、先の当コラムでもふれたように、仮定法だ、と気づきます。仮定法の問題として、文法書には、主語に仮定の意味が含まれる場合として説明されている個所ですね。

“Who knows?”といういい方があります。誰が知っているのか→誰も知らない→神のみぞ知る、という意味ですね。そうだとすると、それと対比させて、今回の文章“Who knew?”は、現実と違う事実=みんな知っている→明らかである、となるはずです。

“Taking cost into consideration is Marxist?を修辞法と理解して、「費用を考慮することが直ちにマルクス主義者となるわけではない。」とすると、それに続く文章は、「そんなことは明らかだ」となります。

“Taking cost into consideration is Marxist?を、「費用を考慮に入れることがマルクス主義だって?」と訳して、大胆な意訳でつなげるとすると、「そんなことは神様だってご存じない!」とでもなりましょうか。

一覧へ戻る