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平成28(2016)年8月のコラム一覧へ戻る

中村紘子さんが亡くなった

執筆 : 代表弁護士 大塚嘉一

1.中村紘子さんは、ピアニスト。チャイコフスキーコンクール入賞者。彼女の力強い(強すぎる?)ピアノに勇気づけられた経験をもつ人も多いのではないでしょうか。テレビコマーシャルにも登場し、絶大な人気を誇っていました。

今年(平成28年)7月26日、お亡くなりになりました。享年72歳。

2.中村さんのご主人は、作家の庄司薫。

代表作の「赤頭巾ちゃん気をつけて」は、ベストセラーになりました。サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」に似ているのでは、との声も聞こえました。成熟社会での青年の悩み、通過儀礼は世界共通なのではないでしょうか。

似ているといえば、後半生を、外界との接触を断ち、半ば隠遁生活のようにして過ごしたのもそう。そのサリンジャーは、今はなく、生前ろくなことをしていなかったようですが、庄司氏は何をしていた、しているのでしょうか。

3.「赤頭巾ちゃん」の主人公の「僕」の、都会でのガールフレンドとの交際、高校生活などなど、昭和40年代の田舎の男子校の高校生には全てがまぶしかった。私は、後に、作中に登場する銀座の不二家で食事をしたときに、じんわりと幸せがこみあげてくるのを感じたほどです。

弁護士になって、庄司薫と日比谷高校の同級生であった埼玉弁護士会の重鎮の畑仁先生とお近づきになり、何かのおりに、先生が、ふと、「クオ・ヴァディスを書いたの、誰だっけ」、と呟くのに対し、「シェンキェヴィチですよ」、と即答できたのも、「クオ・ヴァディス」が庄司氏の触れるとろであり、高3の夏休みに、岩波文庫で読んでいたおかげです。当時の日比谷高校の生徒の必読書だったのですね。

お二人が住む、慶応女子高のプールの見える(見えた?)マンションの相場を、調べてみたりしたこともありました。

4.若いお二人、庄司薫が得意そうにハンドルを握り、中村紘子が楽しそうに身を乗り出して手をふって、オープンのフェラーリに乗っている写真を載せた当時の雑誌は、今も、私の実家の蔵の二階に、私の宝物として、木綿の憧れに包まれて、ある。

今、その包みを開ける勇気は、ない。

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