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伊藤計劃著「虐殺器官」(2007年6月20日)を読む

執筆 : 代表弁護士 大塚嘉一

1.SFの、もはやこれは「古典」、である。SFには、もうずいぶんご無沙汰しており久しぶりなのだが、一読して、これは世界水準の傑作である、と思った。実際に、翻訳され、海外でも評価が高いと聞く。SFマニアの間での評価も高い。

2.主人公は、近未来のアメリカの若き兵士。世界から虐殺を無くすために戦っているのだが、皮肉な結末を迎える。

世界を舞台に、大胆なストーリー展開で読ませる。様々な分野の知識の細かいこと、細かいこと。進化生物学の成果も取り入れられている。

3.本書の元の原稿は、2006年第7回小松左京賞に応募され、審査員が激賞するも、肝心の左京が、入賞を拒否した、という。

本作品の主人公は、子供のころ虐待されていたこと、それが作品の結末にも影響を与えていることが示唆される。左京が、本作品を受け入れ難かった理由でもあるのではないか。SFに教訓を求めるべきではないと思うが、あまりにも辛い。

4.本書をきっかけに、SFの名作と言われる作品を、いくつか読んでみた。その中には、過去に自分でも読んでいるものも、そうでないもの、日本の作家のもの、海外のそれもあった。半村良の「妖星伝」などは、若いころ読んだが、今も感動する。そして、今でも、私の想像力を刺激する。

しかし、中には、これが傑作か?というものもあった。ある人にとっては、感動を受け、忘れられない作品なのであろう。SFに限らず、芸術作品は、その中身のみならず、それと人生のどの時期に出会ったかということも、大事なのではないか、と改めて思う。人間の成長は、様々な出会いを糧として、自己を形成する過程でもあるから。

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