2026.07.23
同族会社のみなさん、緊急気象警報が発令されました。まもなく線状降水帯が発生します。
弁護士 大塚嘉一(おおつかよしかず)
1.同族会社というと、一般にはファミリービジネスであるとか、オーナー企業であるとか、親族、知人らにより経営される会社と漠然とイメージされています。
しかし法令上は、その目的に応じて、定義がなされています。
法人税法では、特定の株主が、発行済株式の50%超を保有する会社を同族会社と言います。会社の私物化などを防ぐための種々の規制があります。
会社法では、株主が株式を譲渡する際に会社の承諾を必要とする株式(譲渡制限株式、譲渡制限付株式)を認めています。このよう株式を発行する会社を非公開会社(株式譲渡制限会社)などと呼びます。会社経営の安定、乗っ取りの防止などを目的とします。
譲渡制限株式などの非公開株(非上場株式)については、その評価方法について、国税庁により「財産評価基本通達」が制定されています。
ここでは、非公開会社を、同族会社ということにしておきましょうか。
従前から、非上場株式の評価をめぐっては納税者と国税庁との間で裁判となるなど、問題がありました。今般、上記通達の見直しが検討されており(日本経済新聞令和8年4月15日)、相続税評価額が増加する可能性があります。同族会社の経営や事業承継、株主に重大な影響を及ぼすことが懸念されます。そうなれば「線状降水帯」が発生したも同然です。
2.非上場株式については、株式市場における価格がなく、その評価が問題となります。
上記国税庁の通達により、従来、①類似業種批准方式、②純資産価額方式、➂それらの併用が用いられてきました。
特に①の類似業種批准方式は、一般には評価額が低額であるとの批判がありました。
3.経営者の注意するべき点。
評価額が増額となると、次のようなことが直ちに問題となります。
会社資産をどのように構成するか。含みを抱えた資産をいつ売却するか。役員報酬・貸借金をいくら、いつ支払うか。配当をどうするか。
М&Aや事業承継に関連して、誰に譲渡するか、いくらで譲渡するか。誰を後継者とするか。
株式をどのように分散、集中させるか。
遺産分割をどうするか。どのような遺言を作成するべきか。遺留分請求権をどう考慮するか。
問題は山積しています。
4.(少数)株主の注意するべき点。
株式の評価が上がると、譲渡制限株式の少数株主は、役員役酬や配当を得られないばかりか、相続時に多額の相続税を負担することになります。株式買取請求などの対策を早急にとる必要があります。
少数ではない株式を所有し、事情により経営に参画していない株主においても事情は同じです。むしろ相続税額がより高額になる事態が想定されます。
5.日本の生産性を低いことを指摘し、中小企業のせいであるとする論客がいます。私は、これは間違いであると考えます。日本の中小企業の大部分は同族会社ですが、その多くの同族会社が、日本の豊かさを支えていると思うからです。
国の豊かさは、GDP、生産性などの経済的指標だけで測れるものではない。私は、国民各層が、その天分を十分に発揮して、自分の人生を充実させ、ああ生まれてきてよかったなと思える人が一人でも多くいる国が、豊かないい国なのだと思います。
金融や情報を扱う会社だけが利益を受け、製造業に従事する労働者が報われない国。大企業に就職できた者だけが勝ち組で、それ以外の者は負け組とはっきり分かれる国。そのような国は、豊かとは言えない。
日本の同族会社は、国民生産に寄与するだけではなく、配分の面において重要な機能を果たしている。その意味では、日本は、世界有数の豊かな、いい国であると思います。私は、同族会社の関係者を応援したい。国民の税負担の公平を十分考慮したうえで、同族会社が活躍して、日本を元気にして欲しい。
同族会社の経営者、株主には、今後も、「気象情報」に留意して、同族会社をめぐる問題にあたってほしい。そう強く願う。