2006.07.09

大塚 嘉一

白洲次郎の「遺言」

1.白洲次郎が、何度目かのブームを迎えているようです。書店の棚に関連本がたくさん並んでいます。若い人には、白洲正子の旦那と言ったほうがとおりがいいでしょうか。

白洲自身の言葉を聞きたいという方には、最近、彼の文章を集めた本「プリンシプルのない日本」(メディア総合研究所)が、再版され便利です。

2.白洲の「遺言」として、「葬式無用 戒名不用」は、有名です。

通商産業省(経済産業省の前身)を作り上げながら、地位に恋恋とすることのなかった白洲らしい清清しい「遺言」ではあります。

ところで法律上の遺言には、遺言できる事項が決まっています。白洲のそれは、これに該当しませんから、法律上有効な遺言と言うことはできません。

白洲が、法律上の遺言を残したのかどうかは不明ですが、遺言には、次のようなメリットがあります。

まず、応援する団体に遺産を寄付したい、世話してくれた子に余分に残したいといった遺志を実現することができます。

相続人の遺留分に留意して誰に何を遺すかを決めて遺言をすれば、事業の承継や先祖伝来の田畑を残すことを可能にし、無用の遺産争いを未然に防ぐことができます。

いわゆる「相続させる」遺言の活用などで、節税が図れます。

3.白洲次郎の語ったこと、語らなかったことも含めて、彼の生き方そのものが、後に残された我々日本人に対する「遺言」と言えるのではないでしょうか。

身罷った後の世界に対しても責任を持ちたいと願う方には、「プリンシプル」を持って遺言書を書くことをお勧めします。