2017.04.25

大塚 嘉一

中沢弘基「生命誕生 地球史から読み解く新しい生命像」を読む

1.中沢弘基著「生命誕生 地球史から読み解く新しい生命像」(講談社現代新書2014年)は、とても意欲的な、すごい本です。

生命の起源について、はっきりしたことはわかっていません。

人類は、まだ、生命を人工的に作り出すことに成功していません。

本書は、生命の誕生について、生命を無機物の生成と並べて統一的に説明しています。地球の誕生のメカニズムの説明とともに。

著者は、元東北大学大学院理学研究科教授。

2.教授の説が正しいとすると、教授は、ニュートンと並ぶ、いやそれ以上の科学者と評価されることになるはずです。

ニュートンは、万有引力の法則を発見し、地上の諸物も、天空の星々も、同じ原理原則で動いていることを明らかにしました。それまでの人間は、地上の物は、上に投げれば落っこちてくる、しかし月や、太陽、火星は落っこちてこない、だから、この地球を支配する法則は、天空を支配する法則とは違うのだ、と漠然と思っていた、そう信じて疑わなかったはずです。

それを、ニュートンは、根底から覆したのです。

3.現在、生命と、無機物とは、全く違うものだと、普通の一般人は、思っているはずです。

しかし、教授は、双方ともに、同じ原理に基づいて、地球の生み出したものだと、言うのです。

びっくり。

極最近の研究の結果も踏まえており、学校で習った知識の更新も必要になります。

まだまだ論理の飛躍する箇所があるし、どうかなと思う点もあるのですが、とても、魅力的な学説です。

一番のロマンは、大昔、地球の奥で、有機分子の一部は生物に、一部はダイヤモンドになった、というお話しです(同書217頁以下)。我々生き物と、光り輝くダイヤモンドとが兄弟だったなんて。

4.私が、もう40歳若かったら、教授の戦列に加わりたかった。